日本建築ドローン協会(JADA)主催の第一回目の研修会を受講しました。建築調査の現場でドローンを活用するにあたっての必要な事項や作業手順を詳しく解説されています。
日本建築ドローン協会(JADA)をご存じだろうか。同協会は建築業界でドローンを活用するべく2017年9月に設立、法人会員75社個人会員95名で組織されている。
設立の目的は、大筋、建築業界とドローン業界の相互理解のもと、安全かつ円滑にドローンを活用していこうと建築業界とドローン業界が一体となって取り組んでいる。
建築業界は、ご多分に漏れず、少子高齢化社会による人材不足が慢性化しており、機械化による効率化が急務。しかしながら、ドローンに関する知識や飛行経験が少ないがゆえの事故、不具合が建築業界の課題。一方建築業界の委託先になるドローン点検の業者は、建築業界のことに疎く、現場の安全基準や事前手続き、成果物のあり方などが、業者によってバラツキがあり問題となっていることが背景にある。
ここの溝を埋める管理者を養成し、ドローンをより安全かつ効率的に運用していこうというもので、「建築ドローン飛行管理責任者」という。
建物調査とは、主に外壁点検のことなのであるが、仮にはじめてドローンを使って点検するとした時、なにをどうすればよいのであろうか?的確な答えを出せる方は案外少ないのではないだろうか。
クリエイティブ空撮になれた業者で起りがちなのが、ヘルメットや安全帯などの装備もそこそこに現場に入り、いきなり現場監督とトラブルになるとか、下見をせずに適当な写真を撮って使い物にならなかったりとか。案外初歩的と思われることが出来ていないのが原因だったりするそうなのだ。
JADAの関係者がドローン業者に求めるのは価格が安いことではなく建築業界に通用するしっかりとした対応だと言っている。だがしかし、「適当」ではうまくいかないのは判っていても、求められている「基準」がわからない状況では「適当」にならざるを得ない。
ここのギャップを埋めるべくJADAが今回策定したのが、「建築ドローン標準業務仕様書」である。まさにドローンを使って調査を行なうときの作業標準書を作ったのである。
今後、この仕様書を建築業界に広く訴求していくとしており、浸透していけば今後この仕様書に沿った作業の出来るドローン業者が選ばれていくことになる。
一方、なんでここまで厳格にやらなければならないのかという疑問も涌いてくるのであるが、建築業界は独自のカルチャーを古くから培ってきたことにある。私などは、建築と土木は同じに思えるのであるが、実は風土も違えば使っている専門用語も違うのだそうである。
ゆえに、ドローン業者などの「よそ者」がかき回すことは、特に嫌われる対象となる。「郷に入れば郷に従え」である。
二つ目にドローンの安全担保である。「ドローンは安全か?」と聞かれれば、快答にはばかる。なぜなら調査するのは、建物が隣立する市街地が多い。
それだけ電波環境が悪く、ビル風など想定外の突風などの恐れもあり、いつ暴走してもおかしくない劣悪環境なのである。ひとたび事故が起ると、ドローン業者の責任のみならず、委託した建築業者、現場監督責任者などに責任が及び、建築中の現場などでは、事故による工期のづれこみが生じたりすることもあるのだそうだ。
また、現行のドローンの性能限界というのも承知しておく必要がある。出回っているドローンのほとんどはGPSの位置情報を拾っているのだが、GPS電波6個以上受信しないと正確に機能しない。カメラの解像度の限界、安全マージンを考えると接写も限界があるため0.3mmのクラックをきっちり撮影できない。
この限界が建物調査の中の詳細調査の前段階の基本調査であることは委託者も受託者も承知しておく必要がある。「建築ドローン飛行管理責任者」として、より深い知識と経験を積んで点検サービスに臨みたい。