操作と操縦
ある手順に沿って機械を動かすことを操作といいますが、最近のドローンは手順どおりにセットアップ、安全確認、スロットルを上げると機体は上昇し、スロットルを止めるとその場で安定してホバリングします。
基本的に3次元6方向の動きは2本のスティックで操作できます。さらに、飛行させていて不安を感じ、離陸地点に戻したいと思ったら、あらかじめ設定さえしておけば、ボタン一つで障害物を回避しながら自動でホームポイント(離陸地点)に戻ってきます。ここまではおおよそ誰でもできる「操作」です。
これらはフライトコントローラーの進化とGPS位置情報の精度の向上によって実現できるようになってきました。では、「操縦」するということはどのようなことなのでしょうか?
操作は手順に沿って行なうものでしたが、そこに意のままに機体を操る技術を加えたのが操縦だと思うのですね。例えば高度50mを保ちながら被写体に対し逆光を避けてとドローンの陰が映らないポイントに機体を動かすとか、低空からバードアイでトレースして被写体にノーズインするとか、要するに意のままに機体を動かしてカメラワークを行いホームポイントに的確に着陸させることが操縦の基本だと言えます。
腕を磨く
では機体を意のままに操るにはどうすれば良いのでしょうか。
これは正直いって「習うより慣れろ」しかないと思います。量販店には新型の機体が「免許は不要」と唄って展示されていますが、そうかと言って、はじめて手にした機体をいきなり飛ばすのは正直危険ですのでお勧めしません。
スクールに通って基礎を習得すると同時に、トイドローンで室内練習を徹底的にやり、感覚を養っていくことで操縦が身についていきますので、比較的安全なこの方法をお勧めします。
また、ペイロードの大きな機体を操るのは、自動車免許の大型と同様で小型、中型機に十分慣れてからにすると良いでしょう。
しかし、ここまではあくまで機体の操縦の話しです。カメラワークは別物。さらに技術が要求されますのでもしカメラの知識、経験が無いのであれば一からスキルを習得することになります。
突発的に起こる危険
「最近の機体は安定して飛行するので何の問題もないね。」このような安全神話が、ことごとく崩れ落ちる出来事が起こることがあります。
操縦者は、ときに不都合な現実を受け止めなければなりません。すべての責任は操縦者にあるのです。
強風
屋外で飛ばすということは、自然と対峙するということ。要注意なのが「風」です。
少々の風だから大丈夫と、風力を計らずに離陸。ところが上空には想像以上の風が吹いていた。機体はあらぬ方向にどんどん流されていく。コントロールが効かない。やがて機体が米粒のようになっていく。
どうする?緊急着陸か?墜落したらどうする?焦りと恐怖で冷や汗がでてきた。
寸前で仲間のスポーツモード操縦に助けられ何とか帰還。これは私の実体験です。
風が強いときは飛ばしてはならないということは学んでいたが、「せっかくロケにきたのだから」と飛ばす意志が上回った。自然を舐めてはいけない。肝に銘じました。
電波障害
電波は目に見えないので、飛ばしてみないと判らないのが電波状態です。
日本ではドローンに使用されている周波数帯は2.4GHZ。wi-Fiの周波数帯と同じです。なので人口集積地ではいろいろな電波が飛び交っています。
ドローンは機体と送信機をつなぐときに自動的に他と干渉しない周波数を選択していますが、地上高や、障害物などロケーションが変化して電波干渉が起こり、誤作動や映像伝送が途切れたりすることがあります。当然タブレットの画面から映像が途切れノーコントロール状態に。安全を優先して電波状態が悪い時はフライトを中止するのが無難です。
また海、川などの水際では、ドローンに搭載された下方の音波センサー、ピジョンセンサーの誤作動の恐れがありますし、橋梁などの建造物の近くでは反射波によるGPSのマルチパスが起こりやすく、謝った位置情報を基に機体が制御しようとして突然暴走することもありますので要注意です。
このような突発的な事態を回避するには、まず危なそうなところには近づかないこと、少しでも違和感を感じたら無理をせずにホームポイントに戻すことが大事です。
鳥
飛行中のドローンに鳥が威嚇してきたことはないでしょうか。
安全運行管理者で注意をはらっていると、偵察に来た1羽の鳥が、いつの間にか群れになって飛んでくる様子に何度も遭遇しました。普段は何でもない鳥の存在ですが、すっかりナーバスになってしまった。
幸いドローンとの接触は今のところありませんが、鳥と衝突墜落したとの話は何人かの方から聞いています。鳥に威嚇されたら速やかに着陸させるか、突発回避の場合は鳥が真似できない垂直上昇か下降が効果的だそうです。