令和2年度国土交通省無人航空機に係る事故トラブル報告一覧の内容について
令和2年度に国土交通省に報告されているドローンの事故案件は51件ありましたが、以前にくらべかなり事故件数自体が減っているようにみえるのですが、飛行数自体が減っているのか、事故自体が減っているのか、申告数が減っているのかは定かではございません。中でもシングルローター(ヘリコプター)の報告が30%。マルチローターのドローンの報告が70%となっておりました。事故原因を大雑把にみてみますと、モノに接触が43.2%、電波途絶が21.5%、操縦ミスが17.6%、風にあおられてが11.7%、バッテリー容量不足が4%でした。いずれにしても、電波関連以外はヒューマンエラーによるところが大きく、始動点検や安全点検をおこなっていれば防げたかもしれませんので、安全航行に心がけていきましょう。それでは原因についてみてみたいと思います。
モノに接触する案件で多いのが樹木と電線
統計上一番多かったのはモノに接触して墜落するといった事案です。中でも接触物として特に多いのが樹木と電線です。目視による飛行で、補助者をつけてダブルチェックで安全を確認すれば頻繁に起こるものではないと思いますが、目視外で飛行している場合にモニター画面に映りにくく見落としがあったり、障害物センサーが検知しないような細く小さなモノであったりして接触してしまうといった事案だと思います。また3次元空間認知における奥行き感覚も、ある程度慣れないと機体の位置を的確に判断できませんので、自信がない場合はとにかく障害物に近づかないことです。墜落の瞬間は「あっ!」という間で、その後は冷や汗と後悔しかないので、低空で飛行するところでは電線、樹木(小枝)は特に入念にチェックして補助者との連携で安全を確保することが重要になってきますね。また、市街地などは電線が多いので意識してチェックされると思うのですが、案外田んぼや空地など開けた場所は見落としがちですので注意が必要です。
電波途絶による墜落
突然モニターディスプレイがブラックアウトしたとか、映像の伝送遅延やノイズが発生し、フリーズして一時的にロストしたなんていう経験はありませんか?電波途絶による墜落は事故報告全体の21.5%と案外多い事案なのですね。なぜ電波が正常に届かなくなるのか?要因として、距離が遠い、ロケーションが悪い、電波環境が悪いの3つが挙げられます。ドローンメーカーの電波到達距離のカタログ値はあくまで参考値なので、余裕をもって飛行させることが大事です。ほかにも構造物に囲まれたところからの操縦など障害物がある場合は到達距離が短くなり、電波状態が不安定になります。また、携帯電話基地局が近くにある場合や、市街地で2.4GHZ帯の電波が多数飛んでいる場合などは干渉して電波状態が非常に不安定になることがあります。事故回避策としては、飛行前にまわりの状況をよく確認すること、電波が不安定になった時点で無理をせず機体を戻すこと、モニター画面がフリーズしても慌てず、スティックから手をはなしホバリング状態にしてまずは落ち着くことです。一定時間電波が途絶えた場合、機体は自動的にセイフティー機能がはいり事前設定どおりその場に着陸するか離陸地点に戻ってくるかするはずですので機体を信じましょう。機体が離陸地点に戻ってくる途中で送信機に再接続され復帰することがあるのでそのときにキャッチアップが可能になります。いつまでも復帰されない場合は、残念ですが墜落の可能性が高いですので、途絶えた地点を捜索することになります。仕事のときはスケジュール的に少々無理しても飛ばしてしまいたいという気持ちになるもの当然ですが、異常を感じたら勇気をもって機体を戻すことが事故防止につながります。
風に煽られる
最後に全体の11.7%あった風にあおられて墜落したという事案について触れてみたいと思います。大型のジェット機やヘリコプターにおいても風の状況判断は、場合によって飛行中止をするくらい重要な要素になっていますね。ドローンのような軽い機体は、風の影響を受けやすいので特に注意しなければなりません。また風は気まぐれで、地上と上空では風の強さや方向が違う場合があったり、突風もさることながら、構造物との隙間から部分的に強い風が吹いていたりすることがあります。風速5m/s以上の風が吹く状況であれば飛行を一時見合わせたり、飛行姿勢が風によって頻繁に乱れる状況や、高度を上げたときに流されるようであれば速やかに着陸するなどの措置が事故を未然に防ぎます。稀に、構造物周辺を飛行させるなどしていたときに、電波状態が悪く機体が不安定な動きを示したところに突風が吹き機体が大きく煽られ、とっさに煽られた逆方向に舵を切ったところで、あえなく墜落という事案もあるようです。すなわち機体のフライトコントローラーによる大きな姿勢制御と人為的な操縦、不安定な電波環境による伝送遅延という複合的要因が重なった墜落です。このような状況に陥ってしまうと、ベテランのパイロットであってもなすすべなく残念な結果となってしまいます。回避するには無理をせず、異常を感知したら飛行を見合わせることしかなさそうです。